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球体関節人形 / ガラスの目玉 / オタク
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続きを書くか未定な作品。







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 ―――瞼の向こう側に光を感じ、その眩しさに眉根を寄せる。
 やっとの思いで目を開くと、木々の間から覗く太陽と目が合い、思わずまた固く目を閉じた。
 一体自分は何のためにここにいるのだろうか。いや、何故ここにいるのだろうか。
 懐かしい気がする。でも見慣れた気がする。
 遠いような近いような記憶を手繰り寄せるが、思い出すのは眠る直前の嫌な記憶だけだった。
 嫉みだの妬みだの僻みだの、私利私欲と他人への羨望が嫉妬に変わった恨み。そんなどうでもいいことで争う世の中に絶望しながら眠りについた。
 もう一度光の世界を見やる。やたら眩しかったのは雪に光が反射していたかららしい。雪は止んでいるようだが、この中でよく眠れて、生きていたと思う。常人なら死んでいるところだ。
「―――………」
 そう、常人なら死んでいるところだ。
 積もった白雪の上に倒れる、みどりの黒髪を持つ青年。しかしこの寒さのせいか、はたまた死んでいるのか、顔は雪よりもなお白く、また青かった。
 思わず数秒見詰め、瞬き………彼の首に手を当てる。
 死んでいた。冷たい身体は固くなっており、しかし周囲の寒さのせいか腐ることはないようだった。
「―――………」
 彼もまた、この世に絶望しながら眠りについたのだろうか。
 前世だとか絆だとか、そういうものを信じてはいなかったが、少しだけ彼に親近感と同情を覚える。
「………ジル」
 呼ぶ。答えがないのもわかっていたのに。
 少しずつ、雪が降り出す。ジルクリフトの蒼白な顔に少しずつ積もっていく。
「ジルクリフト」
 しゃがみ、白い六花を払ってやりながら、意味もなく。
「………」
 この世に蘇生術があるのかと言われれば、ない。
 不老不死にも似たそのすべを、人は持たない。持っていれば、いくら争いが起ころうとも、誰も悲しまない。
 それが普通の世の中で、常識だ。
 一度死んだ人間を生き返らせるなんて、奇跡に等しい。
 もしその奇跡が起こるのだとしたら、その対価として降り注ぐ災厄とは一体どれほどのものなのだろう。
「………」
 ………いや、どうせ、災厄だらけの世の中だ。
 長い金髪を背中に払い退け、その雪よりもなお凍てついた青い瞳でジルクリフトを見詰める。
「………少しくらい不幸が増えたって、誰も気付かないし、悲しまないよ。少なくとも、僕以外は」
 そして少年は、奇跡に等しい災厄と引き換えに、禁断へと手を伸ばした。



 少しして、ジルクリフトの頬が色づく。少年が払ってやらずとも雪は勝手に溶けた。
「………っ」
 ジルクリフトが顔をしかめる。眩しいのだろう。その顔に影を落とすようにしゃがみ、髪に積もった雪を払ってやると、赤い瞳がゆっくりと少年を見詰めた。
「気がついた?」
 問い、小さく笑いかける。
「………」
 しかしジルクリフトの未だ薄青い唇が紡いだのは、
「お前………誰だ?」
 奇跡に等しい、災厄だった。
 少年は一瞬だけ目を見開き、すぐに伏せる。想定内だったとはいえ、さすがに動揺せずにはいられなかった。
 死んだから記憶がリセットされている。ただそれだけのことと思い直すまでは。
「僕は………」
 そこまで言って、少年は気付く。彼には便宜上の名前しかないのだ。
「………誰だと思う?」
 思わず、逆に問う。
 当然ながらジルクリフトは憤然とした様子で「俺が聞いたんだ」と返した。
「………そうだね」
 雪よりもなお、冷たい。
 そして、何もない。
「………シエル」
 咄嗟に思いついたのは、それだった。
 ジルクリフトは明らかに疑うような目でこちらを見ている。当然だ。偽名のようなものなのだから。
「名前なんて便宜上の存在。君も僕も同じ存在だから、区別するための呼称がないと困る。ただそれだけのものでしょ? ジルクリフトはその名前を、この世で初めて誰かにもらう愛情だとでも思ってるの?」
 嘲笑うつもりはなかったのだが、ジルクリフトにはそう見えてもおかしくない。
 しかし、意外にもジルクリフトは黙った。いつもなら反発してくるはずなのに、こんなときは大人しかった。
「………シエルという名前が気に入らないなら、僕のことは兄さんとでも呼べばいいよ」
「まさか。誰が自分より小さいやつを兄と呼ぶ」
「じゃあ弟とでも呼べばいいさ。なんなら父さんでも構わないよ?」
 ジルクリフトは少し困った様子で俯き、やがてため息を吐いて立ち上がった。
「………シエル」
「何?」
 そうして二人は、やっと歩き出す。
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